大野雄二は真性のジャズマンである
ルパン3世はお好きですか?
僕は「カリオストロの城」でアニメの楽しさに目覚め、「トワイライトジェミニ」のエンディングソングで涙し、「血煙の石川五エ門」でシリアス路線のカッコよさに惚れ直すくらいに一丁前のファンを自認している。
そんなルパンシリーズの音楽の一切を手掛けるのはご存じ大野雄二その人である。
御大は現在81歳。「大野雄二ルパンティックシックス」で現役バリバリで活躍中である。
ルパンのイメージが強い大野だが、昔はバリバリのジャズマンとして日野皓正のアルバムに参加していた事もあるし、映画音楽では「犬神家の一族」を手掛けたりと幅広い才をお持ちなのだ。
大野はルパン絡みのジャズアルバムを両手では収まらないくらい多く手掛けている。
好きなアルバム色々あるが初期の「Jazz the 2nd」を推したい。今のルパンティックシックスのようなアンサンブルも捨て難いが、初心者から熟練のマニアにも等しく納得させられるアルバムはこれである。
アルバム全体を包む都会的な雰囲気とジャズ特有のダークさが絶妙にマッチして流して聴いても、静聴しても満足感が得られる稀有なアルバムだ。ファストテンポの曲がなくてダレさせないのも凄い。
ここではトリオを基本とし、ボーカルやギターを上手く絡ませている。特に名演「炎のたからもの」ではTokuが渋いボーカルとフリューゲルホルンを巧みに使い、チェット・ベイカーにも負けない演奏を披露している。
皆さんも「炎のたからもの」好きでしょ?是非オリジナルverとは違うジャズverの良さを味わって頂きたい。
アルバムを通して聴けば大野雄二が真性のジャズマンとして、そしてクリエイターとしていかに優れているかすぐ理解頂けるはずだ。
ここまで僕がルパンファンである事を分かって頂けたかと思うが、そんな僕も映画「ルパンvs複製人間」のマモーだけは苦手、いや嫌いである。TVでしこたま見せられたのと、パチンコ「復活のマモー」で散々泣かされたからだ。
僕と同じ理由でマモーが嫌いな人は全国で10人は下らないと思う。
炎のような衝動、全てを灰と化す
先週の仕事の振り返りをする。赤面するような事がいっぱいあり、また後悔するような事もいっぱいあった。
ただ大体を重く捉えない為、次の日には忘れるのが僕の良いところだと思っている。
今週も締めは熱い音をぶつけてくれるブルーノートレーベルを聴いて全てを忘れよう!
今日はジョー・ヘンダーソンの「Inner Urge」に耳を傾ける。相方にマッコイ・タイナー、エルビン・ジョーンズと天下のコルトレーンカルテットを彷彿とさせる。
ところでジョーヘンを紹介する時、どう説明するかという事で大いに悩む。ジョーヘンの音は一言で言うと、「老練のコルトレーン」と言うのが正しいか。
コルトレーンといえば「シーツオブサウンド」という細かい音を敷き詰めた、メカニカルな奏法で後世に多大なる影響を与え、コルトレーン以後のサックス奏者はコルトレーンから何らかの影響を受けているというのが通説である。
勿論ジョーヘンもその中の一人である。
ジョーヘンはグネグネとした音でコルトレーン風に吹く。だが、いかんせん馬力がない為「平凡な演奏」になる。「おじいちゃん」なのだ。
ブルーノート時代は新主流派に分類されがちだが、出て来る音は以外とバッパーしてる。だからウェイン・ショーターに比べればはるかに聴きやすいのだ。
さて、そんなジョーヘンも「Inner Urge」、邦題「内なる衝動」で大いに燃えている。
一曲目のタイトル曲が、新主流派の演奏らしさに熱気をはらませブリブリ吹いている。だがおススメは5曲目スタンダードの「Night And Day」である。
オリジナルが多いブルーノートの、ましてや1964年新主流派のこの時代にこれを持ってきたジョーヘンのセンスに脱帽だ。
普段より熱をはらませ、感情を織り交ぜ吹いている。演奏が進むにつれ赤黒く燃える音、だがその熱はどこまでもクールだ。この音はコルトレーンの二番煎じではなく、紛れもないオリジナルだ。
嫌なことを忘れようと聴き始めたのに逆効果だったようだ。自信を持ってカッコよく吹くジョーヘンにモヤモヤする。
モヤモヤといえばKDDIの通信障害は1日経っても収まらないらしい。僕はソフトバンクなので難を逃れた。
今回の通信障害で被害を被ったユーザーの方々やKDDIの現場の方達の大変さを思えば、個人の失敗なんか大した事ないと思い、また明日から頑張ろうと思う。
デブっちょおじさんの面目躍如
タビー・ヘイズを形容する時、「パワフル」という言葉がぴったりである。
サックスは勿論の事、体もデカい。イギリス人だからガリガリな労働者風を想像するが全くの真逆である。
あのイギリスで一体何食ったらこんな音が出るんだろう。フィッシュアンドチップスでないことだけは間違いない。
デカくて、張りがあって、スムーズな音運びで苦しそうな素振りはいつも見せない。簡単に情緒に流れずに自己を表現出来る素晴らしいアーティストである。
タビーの作品では「Mexican Green」が大好きだ。シンプルなワンホーンで縦横無尽に駆け抜ける。美味しい演奏の宝庫である。
特に4曲目「The Second City Steamer」は圧巻である。タンギングがこんな速い曲も中々ない。そして軽快である。
米国でこれだけやれるアーティストは誰だろう?と考える。
ロリンズは豪放さでは勝るが、軽やかさに欠ける。調子の良い時のキャノンボールが近いか・・ちょっと近しい面子が思い浮かばない。僕のジャズ観もまだまだだ。
こうして見るとジャズは米国のものといつも思いながらも、世界中には未知の素晴らしいアーティストがいっぱいいる事にワクワクしてしまう。それと同時にタビー程の腕前でもメジャーになり切れてないのは残念に思う。
ワクワクといえば、息子が陸上の地区大会で入賞して県大会行きを決めた。
のし上がって、タビーよりも世に名を馳せて欲しいものである。
地味なだけで侮るな!
アート・ブレイキーの「At The Jazz Corner Of The World」は地味盤である。通でもない限り見向きもされない。
同じ4000番台に「Meet You At The Jazz Corner Of The World」というソックリ盤があるから尚更である。
みんな口を開けば「Moanin'」「At The Birdland」等と面白くない。
4015番。1959年のハードバップ全盛期、世界のジャズコーナーに立っているアートは一味違う。
一曲目「Hipsippy Blues」アートは殆どリズムを淡々と刻むだけ。だが、その何気なさがリー・モーガンやハンク・モブレーのフロント陣の調子を徐々に上げていく。
温まったところでと2曲目「Justice」でモーガンが唸りをあげる。全盛期と言われるこの頃は早撃ち機関銃のようなプレーが気持ちいい〜。
3曲目の「The Theme」。2分19秒の中に管楽器のソロはなし。職人芸のような一糸乱れぬアンサンブルとボビー・ティモンズのらしからぬバド・パウエルを思わせるバップピアノ。ピー・ウィー・マーケットのアナウンスが華を添える。
この3曲を聴けば「Moanin'」にも負けていない事に気付くだろう。それと同時に「Moanin'」のようになれない事も。
曲目が地味なのだ。得意のチュニジアの夜も、有名スタンダードもない。これでは目をかけてもらえない。
僕は妄想する。モブレーの入った「チュニジアの夜」や「ノー・プロブレム」をやってたらどんな感じだろうって。
この作品で、普段よりメタリックでハードに迫るモブレーを聴いてると、そんな妄想が頭をよぎる。ジャズはないモノねだりの組み合わせを想像するのが楽しいのだ。
今は深夜0時、「シンウルトラマン」に寄せてきた「シンポテト」なるものを食べている。嫁さんがスーパーで買ってきたのだがすこぶる美味い。明日自分の分買いに行こうと決心した。
こういう変わり種を買ってくる嫁さんのセンスには参っている。
ウェストコーストの効能
治りかけが一番辛い。
コロナワクチンを打ってから2日目。1日で治ると踏んでいた僕は絶賛トイレに向かってリバース中である。
昨日から2時間以上寝れてない。泣く程しんどい。トイレに向かうのは5回目。もう胃液すら出ない(汚い話でホント申し訳ない)
4回目のワクチンは止めようと心に誓った。
こういう時こそジャズを聴くのが僕のルーティンである。辛い時こそ自分を奮い立たせる必要があるからだ。
今日のセレクトは何にしようと悩むが、ダメージを受けてる今は選ぶ気力がない。目を瞑って700枚はあるCD棚に向かう。当てずっぽうで一枚選ぶ。
チェット・ベイカーとアート・ペッパーの共作、「The Route」である。この作品はチェットとアートの大物2人が入っているのは勿論の事、テナーにリッチー・カミューカを入れたウェストコーストジャズの意欲作である。
1956年といえばホーン奏者の面々は最も脂ののってる時代だ。レベルが高いのは言うまでもない。
4曲目の「Minor Yours」を再生する。ウェストコーストは明るい曲想が割合多いからつまらないモノが多いが、これは当たりだ。
アート・チェット・リッチーの順にソロを取るが甲乙つけ難い。
この作品が美味しいのは他にも理由がある。何とホーン奏者全員にソロ曲が与えられているのだ。
8曲目がペッパー、9曲目がチェット、10曲目がリッチーとなっている。お気に入りは10曲目の「If I Should Lose You」である。
この曲でテナーといえばハンク・モブレーのブルーノート盤が有名であるが、今の気分でいえばカラッと仕上がっているこちらに軍配が上がる。
全曲聴き終え良いジャズを聴いたな、と思った反面、思いの外リズム陣がドライブしており胃に響いていたのだ。
トイレに掛け込みまた繰り返している。トホホ・・。
清涼剤マイルス
ワクチン後の熱が酷い。
皮肉っぽい僕は普段の平熱は基本35℃台。酷いきは34.9℃なんてのがある。「僕さん結構冷たいっすよねw」と言われるが、まさに心体共にその通りだと思う。
そんな僕が今38.7℃。12時にシンドくて早退した段階で37.6℃だったから順調に伸びている。
こういうのは現在掛けている「20年米国債ベア」でやって欲しい。昨日からの乱高下で胸も心なしか苦しいし、独りで心細い。
こんな時はマイルスのバラードで身も心も落ち着かせるに限る。「Cookin'」をターンテーブルに載せ、A面「My Funny Valentine」に針を合わせる。
プチプチと鳴るノイズが心地よい。レッド・ガーランドのシングルトーンとフィリー・ジョーのブラッシングに導かれ、マイルスがソッと入ってくる。
低音で鳴らすトランペットの響きは、他のトランペッターには無い都会的な雰囲気を秘めており名演である。
別枠で紹介したい曲がある。アニメ「カウボーイビバップ」にFarewell Blues」という曲だ。これは「My Funny Valentine」と「So What」のいいとこ取りをしたものだ。
2分46秒という短い為、サントラの域を出ないが、マイルスが生きて「普通のジャズ」を続けてたらこんな感じか、っていつも思っている。
「アニメ」という色眼鏡を外して聴いてみて欲しい。ジャズファンならきっと気にいるはずだ。
聴き終えると幾分か熱が下がったような気がする。マイルスのバラードはホント良い清涼剤だ。
勿論この後のコルトレーンの粗野なテナーはNGだ。僕は次曲に入る前に針を上げた。
ワクチンとキューンと僕
コロナワクチン3回目を駅前のデパートで打ってきた。田舎はイオンが主流の為、デパートに来る事はほとんどない。
僕が子供の頃の1980年代半ば、デパートといえば屋上に遊園地がまだあった時代である。上階にあるレストランは入口から30mも奥行きのある豪華な造りで、エスカレーターから降りて到着した時の感動は今でも覚えている。
久しぶりに一階からブラブラ探索していると化粧品コーナーのキレイな販売員は退屈そうである。平日だから仕方あるまい。
最後にここにきたのは7年前。仕事の会合に参加するようになり、ビジネスバッグが欲しくなったこの頃、見栄っ張りの僕はゼロハリバートンのアタッシュケースが欲しくなり、3階に買いに来た覚えがある。
だが、3階全てがワクチン会場になっていた。ここ数年コロナでデパートの落ち込みは知っていたがここまでとは思わなんだ。地方の現状を知り少し寂しさを感じた。
受付を済ませようと歩を進めるとスティーブがいた。スティーブはスティーブでもジョブスではない。キューンの方である。
スティーブ・キューンはブルーノートの新主流派の快作ピート・ラ・ロッカの「Basra」に参加した白人ピアニストである。
黒縁メガネの学者風な風貌のオジさんがそこにいた。スティーブは案内係の人達全員着用であろう黄色いベストを着てるが似合ってない。思わず苦笑した。
注射打つ役と配役を間違えたとしか思えない。
スティーブは手慣れた感じで、ワクチンを受けに来た人達の長蛇の列を右へ左へと捌いてく。澱みがない。
この感じ、1989年録音の彼のリーダー作「Oceans In The Sky」を思い出す。
ここでのプレーは緊張、寛ぎ、優雅さのバランスに優れており、彼のベストの一つである。どの演奏も澱みがないのだ。
全曲素晴らしいが、5曲目のタイトル曲が特に良い。ジャケットに描かれている宇宙空間を疾走するようなナンバーである。
ベースの天才ミロスラヴ・ヴィトスとドラムのアルド・ロマーノにケツを叩かれ、いつも以上にオーバーなプレーになってるがそれが良い味を出してる。
この曲だけ音量が他の曲より1段階上に聴こえるのは決して気のせいではないだろう。
奇しくも以前投稿したスティーブ・グロスマンの「Born At The Same Time」と同じOWLレーベルからの作品である。
このレーベルはヨーロッパの精鋭を捕まえてセンスのある良質なジャズを提供するのが上手い。他にもないか現在探索中である。
ワクチン接種が終わり会場を後にしようとすると、後ろから明るく和やかな声が聞こえてくる。「お疲れ様でした〜。お気をつけて〜☺️」
配役やっぱり間違えてると思う。