G4のjazzblog

ジャズに人生の半分を捧げた、ノーフレンドオッさん

ワクチンとキューンと僕

コロナワクチン3回目を駅前のデパートで打ってきた。田舎はイオンが主流の為、デパートに来る事はほとんどない。

 

僕が子供の頃の1980年代半ば、デパートといえば屋上に遊園地がまだあった時代である。上階にあるレストランは入口から30mも奥行きのある豪華な造りで、エスカレーターから降りて到着した時の感動は今でも覚えている。

 

久しぶりに一階からブラブラ探索していると化粧品コーナーのキレイな販売員は退屈そうである。平日だから仕方あるまい。

 

最後にここにきたのは7年前。仕事の会合に参加するようになり、ビジネスバッグが欲しくなったこの頃、見栄っ張りの僕はゼロハリバートンアタッシュケースが欲しくなり、3階に買いに来た覚えがある。

 

だが、3階全てがワクチン会場になっていた。ここ数年コロナでデパートの落ち込みは知っていたがここまでとは思わなんだ。地方の現状を知り少し寂しさを感じた。

 

受付を済ませようと歩を進めるとスティーブがいた。スティーブはスティーブでもジョブスではない。キューンの方である。

 

ティーブ・キューンはブルーノート新主流派の快作ピート・ラ・ロッカの「Basra」に参加した白人ピアニストである。

 

黒縁メガネの学者風な風貌のオジさんがそこにいた。スティーブは案内係の人達全員着用であろう黄色いベストを着てるが似合ってない。思わず苦笑した。

 

注射打つ役と配役を間違えたとしか思えない。

 

ティーブは手慣れた感じで、ワクチンを受けに来た人達の長蛇の列を右へ左へと捌いてく。澱みがない。

 

この感じ、1989年録音の彼のリーダー作「Oceans In The Sky」を思い出す。

 

ここでのプレーは緊張、寛ぎ、優雅さのバランスに優れており、彼のベストの一つである。どの演奏も澱みがないのだ。

 

全曲素晴らしいが、5曲目のタイトル曲が特に良い。ジャケットに描かれている宇宙空間を疾走するようなナンバーである。

 

ベースの天才ミロスラヴ・ヴィトスとドラムのアルド・ロマーノにケツを叩かれ、いつも以上にオーバーなプレーになってるがそれが良い味を出してる。

 

この曲だけ音量が他の曲より1段階上に聴こえるのは決して気のせいではないだろう。

 

奇しくも以前投稿したスティーブ・グロスマンの「Born At The Same Time」と同じOWLレーベルからの作品である。

 

このレーベルはヨーロッパの精鋭を捕まえてセンスのある良質なジャズを提供するのが上手い。他にもないか現在探索中である。

 

ワクチン接種が終わり会場を後にしようとすると、後ろから明るく和やかな声が聞こえてくる。「お疲れ様でした〜。お気をつけて〜☺️」


配役やっぱり間違えてると思う。