コニッツの本気がここに。
Amazonコニッツ程好き嫌いが明確に出るアーティストも少なくないのではないか?初期はクール系の括りで音が似ているスタン・ゲッツと比較されやすい。
1950年初め頃の音やフレーズは似通っており、「兄弟だろ、こいつら」みたいな雰囲気を醸し出している。
だがゲッツとコニッツは歳を重ねるにつれ、人気も演奏スタイルも逆相関になっていった。
もちろん人気がないのはコニッツである。
ゲッツは麻薬でお縄になったり、ボサノヴァをいち早く取り入れて「Desafinado」を100万枚のヒットへ導いたり波瀾万丈でいかにも「ジャズ」らしい。
対するコニッツだ。彼はジャズをやってない。いや、やってはいるのだが「ジャズ」になっていない。
偏見マックスで言うと、コニッツは「メリハリ」「盛り上がり」「感情の高まり」といったジャズ特有の要素が不足しているのだ。
ずっと聴き続けていると単調で眠くなる時がある。車の運転の際BGMで流した時は事故になりかけた事があるくらいだ。
そんなコニッツを僕は一曲だけ手放しで褒めたい。「Subconcious-Lee」の「マシュマロ」だ。
フワフワ浮いて掴みどころのないクール系特有の空気はここになく、コニッツを筆頭に全員がこの一曲だけ奇跡的に纏まっており、最初から最後まで聴かせる演奏になっている。「流麗」そのものだ。
もちろん1949年の演奏で音質はお世辞にもいいとは言えない。しかしながらデンジル・ベストの踊るようなブラシさばき、コニッツの煌めくようなアドリブに注目して欲しい。
ふと思う。こんなキレのあるアドリブ出来るなら「いつもヤレ!」と。このアルバムからコニッツに入った僕は、その後ごく一部を除いて何枚スカをつかまされたか分かったもんではない。